デザインが良くなったらどうなるの? #16

株式会社NASUのメールマガジン
株式会社NASU 2025.04.02
読者限定

おはようございます。株式会社NASUです。4月に入り、新年度がスタートしましたね。街中では桜が開花しはじめ、新たな気持ちでスタートを切る方も多いのではないでしょうか。変化の多いこの季節、皆さまの体調管理はもちろんのこと、新しい環境にもスムーズになじめるよう、ぜひご自分のペースを大切にお過ごしください。今日もビジネスパーソンの皆さまに向けて「実務に活かせるデザインの知識」をお届けします。最後までご覧いただき、ご自身のお仕事にお役立ていただければ幸いです。

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今週のテーマ:

01 | 前田高志がデザインの考え方・視点を伝える:
デザインの育て方

02 | 世の中のデザインを深掘りする:
よーじやロゴリニューアルから学ぶブランド論

03 | NASUのデザインが生んだビジネスの変化:
事業を意識しつつ、会食の場で話題になる名刺が欲しい!」渡辺ブルドーザ工事株式会社

04 | デザインの疑問に一問一答!:
Q. 好きなデザイン、というのはそれぞれだと思うが、誰もが良いデザイン、という絶対的なものがわからない。

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01 | 前田高志がデザインの考え方・視点を伝える

デザインの育て方

(執筆 : 前田高志)

独立して9年目に入りました。

独立当初は、個人事業主の方のロゴデザインだけを中心に仕事をしていました。ロゴって、まさにその会社やサービスの“顔”になるものだし、そこを起点にいろんなクリエイティブに展開できる。顔であり看板。もっというと、ある意味「心臓」のような存在だと思っています。

でも、あるときからロゴだけの仕事を、あまり積極的に受けなくなりました。完全にゼロというわけではないけれど、「原則としてやらないこと」にしているんです。

なぜかというと──悲しくなることが多いからなんです。

ロゴを納品して終わり、という関係性だと、その後どう扱われているのか分からない。継続的に依頼をくださる方であれば、「こう展開してください」とか「ここはこう工夫できますよ」と、フォローもできる。でも単発だと、ロゴだけをポンと渡して終わってしまう。それがあまりにも寂しい。「寂しい」というのを分解すると、ロゴデザイン時に大事にすると決めたことがすべて“0”になっていることなんですよね。つまりは、何も変わってないということなんですよ。ロゴだけでビジネスの成果を発揮した記憶がほとんどない。

ロゴって、本来“一緒に育てていくもの”です。

僕はよく、「ロゴは子ども」と例えます。クライアントさんが“お父さん”、デザイナーである僕が“お母さん”。遺伝子を受け取って腹を痛めて産んだわけです。

一緒に子ども(=ロゴ)を産み、育てていく感覚です。

でも、納品して終わりだと、それはもう「別居状態」。(連絡はいつでも取れるので離婚ではないんですけど)。どんな育て方をしているのか分からない。ある日、全然違うコンセプトや色で使われていたりして、例えばですが「えっ、うちの子ヤンキーに育てちゃったの!?」ってなる。

もちろん、事情があるのは分かるんです。お父さんが一人で頑張らないといけない場面もあるでしょう。でもせめて、お母さんにも一言、連絡してほしい。

「今ちょっと荒れてるけど、また落ち着かせたいんだ」とか、「こういう方針に変わって…」とか。それだけでも違うんです。状況が分かれば、「だったらこう育てたほうがいいよ」と、お母さんなりの知恵を貸せる。お母さんの方がデザインのことはわかっているんです。デザインだけではなく、お父さんの意志や遺伝子を受け継いで形にしてきたわけですから、そこもわかっています。

ロゴって、発注して納品された時点で「うちのもの」って思いますよね。そりゃ、お金を支払っていますしね。それは、もちろん間違ってはいません。けれど僕としては──**「お母さんが一生懸命、命を削って産んでるんですよ」**と言いたい(笑)。大袈裟じゃなく、デザインは一人では作れない。

だから、どう育っているかは、やっぱり気になる。なんとなく作ってないから。なんとなく作れたら楽なんですけどね。元気にしてるかな?変な道に進んでないかな?って、ついチラチラ見ちゃうんです。お母さんですから。

そして、ここでお願いがあります。

・お母さん(=デザイナー)にも、状況を共有してほしい

・子どもの力を引き出すには、お母さんの知恵が必要。一緒に育てましょう

この2点。とても大事です。ロゴは納品して終わりじゃない。育ててこそ、意味がある。

それからもう一つ。

「クラウドソーシング」も、僕はちょっと距離を置いています。

あれって、例えるなら「何人もに出産させて、その中から1人だけ選ぶ」みたいな話なんです。「誰の子がいいかな〜」って選ばれるあれ、ほんとキツい。

正直、奴隷制度かなって思うこともあります。もちろん、キャンペーンや新規事業など予算が少ない案件での選択肢として必要というのは理解しています。そういう目的ならOK。ただ、本当に効果を期待したい時、ブランドを作りたいときは「育てる」という意識を持って欲しい。NASUのクライアントさんは皆さんわかってくれています。

それが本当の意味で、強く美しいブランドを育てていく道だと思っています。

だから、お母さんもいるんだから──忘れないでくださいね。

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続きは、4348文字あります。
  • よーじやロゴリニューアルから学ぶブランド論
  • 「事業を意識しつつ、会食の場で話題になる名刺が欲しい!」渡辺ブルドーザ工事株式会社
  • Q: 好きなデザイン、というのはそれぞれだと思うが、誰もが良いデザイン、という絶対的なものがわからない。
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